北  十  字  星  雲


にわかに、車の中が、ばっと白く明るくなりました。見ると、もうじつに、金剛石や草の露やあらゆる立派さを集めたような、きらびやかな銀河の川床の上を、水は声もなく形もなく流れ、その流れの真ん中に、ぼうと青白く後光の射した一つの島が見えるのでした。その島の平らな頂に、立派な目もさめるような白い十字架が立って、それはもう、凍った北極の雲で鋳たと言ったらいいか、すきっとした金色の円光をいただいて、静かに永久に立っているのでした。
「ハレルヤ、ハレルヤ」前からも後ろからも声が起こりました。振り返ってみると、車室の中の旅人たちは、みなまっすぐに着物のひだを垂れ、黒いバイブルを胸に当てたり、水晶の数珠をかけたり、どの人もつつましく指を組み合わせて、そっちに祈っているのでした。思わず二人ともまっすぐに立ち上がりました。カムパネルラの頬は、まるで熟したりんごの証のように美しくかがやいて見えました。そして島と十字架とは、だんだん後ろの方へうつって行きました。
銀河鉄道の夜

7.北十字とプリオシン海岸より

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