「初めて、駄菓子屋入ったけど、すごい量のお菓子だね・・・。いっぱいあって。ところで、四部垣、ラムネ二本全部飲むの?大丈夫?」
「バカ。ラムネの一本はお前のだよ。色違いの方。」
「え・・・・?何で?僕が、食べたり、飲んだりする事はできても、また、元のまんまにもどしちゃうの、知ってるでしょ?」
「知ってるけどさ。アトムに聞きたい事があるから・・・・。」
「四部垣・・・・?」
「あそこの土手で話そうぜ。」
「う、うん。」
 土手に下りたら、もう夕日だった。
俺はねっころがって、アトムは座ったままでいた。
「何だか、思ったんだけどさ。四部垣とあの『ゆめや』のおばあさん、親しげだったね。何で?四部垣の家とは、ものすごく離れているのに。」
「・・・・あそこを見つけてから、俺、よく行くようになったんだ。『ゆめや』のおばあさんってさ、俺の事を分かってくれて・・・大好きなんだ。おばあさんが居なくなったら、俺辛いんだ。だから、よく『ゆめや』には通ってる。おばあさんが・・・母ちゃんみたいだからさ。」
「そうなんだ・・・・。それで、話したい事って何?」
「アトム、お前、隠し事してないか?」
「う、ううん!何にもないよ!」
 隠し通そうとしているけど、すぐ分かる。
「知ってるぜ。『ルミコちゃん』の事だろ?実は聞いちゃったんだ。先生とアトムが話してるとこ。」
「そう・・・知ってたんだ・・・・。」
「何でだよ!?何で、死んだ事にしたんだよ!ロボットと言わなかったんだよ!!俺
が、前に『ロボットは人間の召使だ』って言って、それを気にしてんなら、謝るさ!!でも、何でだよ・・・・。」
「だって・・・・ロボットと人間の恋はまだまだ許されないんだよ。」
「別に、いいじゃんか・・・・ロボットだって人間との恋は許されるんじゃないのか!?『好きなら好き』でいいじゃんかよ!!何で、そう、いつも大人は縛り付ける
んだよ!!!!!」
 何でだよ・・・いっつも大人ばかり決めて・・・俺たち子供には縛られるばかりで・・・。
「四部垣・・・ありがとう。でも、しょうがないんだ。それを破ったら、僕はエネルギーをずっと抜かれる刑か、壊される刑にあたるんだよ。だから、ダメなんだ。・・
・・・昔、僕の初恋の人の事を話してあげる。その子は、中性子爆弾っていう、恐ろしい爆弾を持ってた。僕は、その子の事を知らず、極秘の事件で、ある国へ向かったんだ。そうしたら、出会ったんだ。その子と。その子は、ロボットで中性子爆弾を持っていた。僕を壊すために、酷い科学者が、その子の中性子爆弾を作動させてしまったんだ。
それで・・・・目の前で、好きな人がバラバラになっていく姿を見た。
爆弾の中心部は、主に頭とかで、足だけ残ったんだ。帰ってきたあと、お茶の水博士にその子の足と僕の元の足と、付け替えて欲しいって頼んだんだ。ブーツを脱ぐと、
ほら、女の子の足だろ?この子が初恋の子なんだ…。」
アトムの足は本当に女の子の足だった。
「なぁ?お前はルミコちゃんも好き・・・なんだよな?」
 確認で聞いてみた。
「好きっていえば好きだし・・・・。なんて言っていいか分からない。でも・・・。好きなのかもしれない・・・・。」
「アトム、そろそろラムネ飲まないか?」
「う、うん。」
「乾杯しようぜ。失恋の俺にかんぱーい!」
「・・・かんぱい。ごめんね。四部垣もルミコさんのこと・・・・。」
「別にいいぜ。気にしなくても。また、いい女の子見つけるからさ。この世界には、絶対に可愛い女の子がたーくさんいるんだ!気にすることなんてないぜ。」
「あははは。それにしても、このラムネ、おいしいね。少し炭酸が抜けてるけど。」

「長く話したからなぁ・・・。当たり前なんじゃねぇの?
 ・・・・・それにしても、今日の夕日は綺麗だなぁ。
 こんなに綺麗な夕日、見た事がないぜ。」

「今日も、もうすぐわりだね。」
「何だか、長い一日だったなぁ・・・。」
ラムネの炭酸がまた抜けてきた感じがした。
 でも、こんなに綺麗な夕日は大人になっても絶対に忘れないだろうな。

噂のルミコちゃんが転校してくるという話は、段々と薄れていった。
多分、先生が何とかしてくれたんだろう。
アトムも段々と元気を取り戻していった。
「アトム、最近元気だな。ルミコちゃんの事、どうなったんだ?」
「ルミコちゃん、諦めたみたい。ルミコちゃんのおじさんが何とか説得したんだって。あと、先生も色々としてくれたんだ。」
「・・・・アトム。俺さー将来、ロボットと人間の差別が無くなるような職業に就く。そして、もう絶対にお前に、辛い事はさせない。約束する。」
「・・・・ありがとう。でも、何だか四部垣らしくないよ?」
「なんだと!このやろー!」
「そのままの四部垣が一番いいんだよ!!」
 
 廊下が太陽の光で、いっぱいになっていた。

                       終わり



  感想      byレイス
第一章は、遠くにいても、友達を信じようね、そんなテーマが素晴らしいです。
第二章は、子供の居酒屋、駄菓子屋を舞台にする場面があったことに感動しました。
アトムがシブガキを理解して、シブガキが友達のために何かをしてやるという情緒を育んで生長する、そんな青春を見れてうるうるです。
そんな廊下が眩しいです。
そして、ごめんね、アトム、シブガキ。
大人が子供を縛り、ロボットと人間の恋を認めなくて。
でも、人間が弱さに負けないためにはそうするしかないんだよ。
もし、人間とロボットの恋を許してしまったら、
人間は自分に都合の良い、ロボットを選んでしまうだろう。
ロボットは、美しくかっこよく、頭がよく、強く、優しく作られ、老いることもない。
人間がそんなロボットを選んだら、子供が生まれず、人間は絶滅してしまうだろう。
これは人間の欲望という弱さなんだ。
その弱さに負けないために、人間とロボットの恋を認めるわけにはいかないんだよ。
「好きなら好き」その気持ちは消すことは出来ない。
その感情を持つことを禁止することは出来ない。
だけどね、人間であること、ロボットであること、
その理性を働かせることは大事なんだよ。
理性を働かせることを縛られると感じられるかもしれない。
でも、自分の(自分を縛る紐)手綱をしっかりと握るんだよ。
人間の未来のために!!(なんてかっこつけてみたりして)


 感想のコメント    by伴俊作さん
四部垣・・・君は大人を憎んでいるのかもしれない。
四部垣やアトムを縛っている大人が大嫌いなのかもしれない。
でもそれは、君やアトムのためにしている事なんだよ。
四部垣が苦しい目にあわないために。
アトムが悲しまないために。
でも・・・・四部垣、分かっていて欲しい。四部垣の事を分かってくれる友達がいる事を。
四部垣を守ろうとする大人がいる事も。
(つられて書いてみちゃいました<笑>)




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