ススキと三角標の野原
「そうだ。おや、あの河原は月夜だろうか」そっちを見ますと、青白く光る銀河の岸に、銀色の空のすすきが、もうまるで一面、風にさらさらさらさら、揺れて動いて、波を立てているのでした。「月夜でないよ。銀河だから光るんだよ」
ジョバンニは言いながら、まるではね上がりたいくらい愉快になって、足をこつこつ鳴らし、窓から顔を出して、高く高く星めぐりの口笛を吹きながら一生懸命伸び上がって、その天の川の水を、見きわめようとしましたが、始めはどうしてもそれが、はっきりしませんでした。けれどもだんだん気をつけて見ると、そのきれいな水は、ガラスよりも水素よりも透き通って、時々目の加減か、ちらちら紫色の細やかな波を立てたり、虹のようにぎらっと光ったりしながら、声もなくどんどん流れていき、野原にはあっちにもこっちにも、燐光の三角標が、美しく立っていたのです。遠いものは小さく、近いものは大きく、遠いものは橙や黄色ではっきりし、近いものは青白く少しかすんで、あるいは三角形、あるいは四辺形、あるいは稲妻や鎖の形、さまざまに並んで、野原いっぱいに光っているのでした。ジョバンニは、まるでどきどきして、頭をやけに振りました。すると本当にそのきれいな野原中の青や橙や、いろいろ輝く三角標も、てんでに息をつくように、ちらちら揺れたり震えたりしました。
「ぼくはもう、すっかり天の野原に来た」ジョバンニは言いました。
銀河鉄道の夜
6.銀河ステーションより
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カットbyレイス


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